「子どもの学び」① 子どもと外国語(英語)

菅 正隆(大阪樟蔭女子大学児童学部児童学科 学科長・教授)

更新:2016-04-06

子どもたちが人生を幸せに過ごすために絶対必要なアイテムとは!?

最近、保護者の皆様への講演の際に必ずお話しすることがあります。それは、「これからの子どもたちにとって、人生を幸せに過ごすために絶対必要なアイテムが2つあります。それは、英語とICTです。この2つは絶対に欠かすことができません」と。世界がグローバル化社会を向かえるに当たって、勉強でも仕事でも、時には遊びにおいても、英語とICTは欠かせないものになってきています。この流れはもう止めることができません。

 この2つのアイテムの中でも、ICTは日常的に利用することで、使用方法や活用方法を自然と身に付けていくことが可能です。しかし、英語はそうはいきません。誰かに習い、学び、慣れていくことが必要です。つまり、英語はICTのように自然に身に付けることなど到底困難なシロモノなのです。では、どのように英語を身に付けさせ、活用できるように子どもを育てていけばよいのでしょうか。

いつから英語を習わせたら良いのでしょうか?

 赤ちゃんが生まれると、周りの人たちは、赤ちゃんに向かってたくさんの言葉を投げかけます。「いないいないば~(peekaboo)」「たかいたか~い(up, up)」など。このような言葉がけが赤ちゃんの脳に大切な働きをします。これらの言葉を聞くことによって、赤ちゃんの脳に言語中枢ができていくのです。この言語中枢が日本語(母語)を司るものです。仮に、お父さんが日本語を母語とする人、お母さんが英語を母語とする人との間に生まれた赤ちゃんは、毎日異なる2つの言語を聞きながら脳の言語中枢を発達させていきます。これがバイリンガルの脳です。赤ちゃんの脳は、2つの言語を区別し整理していきます。「これを言おう、あれを言おう」と思ったときに、2つの言語を自由自在に活用できるように、言語中枢を整頓していくのです。しかし、両親が日本語話者である場合、脳には日本語だけの言語中枢ができあがります。のちに外国語を学び始めると、日本語とは異なる外国語の中枢ができてくるため、「これを言おう」と思うと、まずは日本語で考えて、その後に外国語中枢を経由して英語を発していくことになります。つまり、外国語の中枢はバイリンガルの赤ちゃんのように日本語のものとは一体になっていないのです。

 したがって、多くの保護者の方々から「いつから英語を習わせたら良いのでしょうか」との質問をいただきますが、答えは「生まれたときから」が正解になります。しかし、中々そうもいきません。通常、小学校から英語を学ぶとすれば、先ほど述べましたように、まずは日本語の能力を向上させることが早道かもしれません。学校で、国語の学力が低いのに英語の学力は高いという例はあまり見たことがありません。そこで、まずは、乳幼児期は日本語での読み聞かせをふんだんに行い、絵本や童話などもたくさん読ませることで英語運用能力向上にも結びつけることが可能と考えられます。もちろん、乳幼児期から英会話スクールや英語学校に通わせることも良いかもしれませんが、費用もかさむことから、自宅で本を読ませたり、英語のDVDを視聴させたり、英語のCDを聞かせることなども効果が期待できます。また、近所にいる英語を母語とする子どもたちと遊ばせることも良いでしょう。

とにかく楽しく英語に触れ、どんどん慣れさせましょう!

 日本語と英語の大きな違いは音の違いにあります。文法は知的学力が向上した後で学習することも可能ですので、まずは音の違いに慣れさせることです。英語には日本語に無い音がたくさんあります。乳幼児期から、英語の音に触れさせることは、その後の英語の発音、読み方にも良い結果が表れることでしょう。
 そして、何よりも乳幼児期から英語に触れさせることで、いわゆる「英語嫌い!」「英語が分からない!」など、英語そのものに対する抵抗感やコンプレックスを持たせないようにすることも大切です。

 なお、子どもにとって、英語を学ぶための教材教具も大切な要素の1つです。私のゼミ(菅ゼミ)では、子どもが楽しく英語に触れ、無理なく英語に慣れてもらうための教材教具の開発を行っています。社会貢献の一環として、(株)サクラクレパスと産学連携を図り、学生の企画・アイデアを世界に発信しています。無料でダウンロードできますのでご興味のある方は、アクセスしてみてください。

http://www.craypas.com/target/teacher/teach-es/english/dl-pdf/

執筆者

  • 菅 正隆
  • 大阪樟蔭女子大学児童学部児童学科 学科長・教授
  • 前文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官。平成23年から導入された小学校外国語活動の生みの親として、全国各地において講演等で活躍中。
  • ふぁみなび:大阪樟蔭女子大学紹介ページ