子育てに役立つ鉄道スタンプラリー 重要なのは大人も楽しむこと(2) 教育に活用できる「鉄道スタンプラリー」

弘田 陽介(福山市立大学大学院・教育学研究科准教授)

更新:2017-04-24

そこでお勧めしたいのがスタンプラリーです。最近では、親子での鉄道への興味の掘り起こしに、各鉄道会社がスタンプラリーやイベントを盛んに展開しています。

 大人から見ると、スタンプを集めるため電車に乗ったり、降りたりしなければならないのは精神的に苦痛です。しかし、お子さん、特に男の子は、一度何かを集めだすと最後まで蒐集(しゅうしゅう)したいという「コンプリート欲」に取りつかれています。スタンプラリーの用紙をいったん手に取り、ひとつスタンプを押して、さらにすべて集めた際の記念グッズなどに気が向いた場合は、大人もずっと一緒にお付き合いしなければなりません。大人ならば1箇所に全種類のスタンプがあればいいのに、と思いますが、子どもにとっては電車に乗って、次のもの、また次のものと集めて廻るのがともかく楽しいのです。

 しかしこういうイベントをきっかけに、子どもはいままで知らなかった世界に触れることになります。例えば東急の「『スター・ウォーズ 反乱者たち』プレミアムスタンプラリー」では、名作『スターウォーズ』の世界を知ることができます。そして、『スターウォーズ』は約40年続くSF映画シリーズですが、宇宙や異星人、メカニックへの興味や友情、恋愛、父子関係といった人間ドラマへの関心が高まります。
時間をかけて、日数をおいて色々な駅を旅していくのは子どもにとっては冒険です。獲物は新たなスタンプですが、それをめがけて、少し電車を待って、また別の駅でスタンプ台を探し、どこでどんなものが出てくるかわからないスタンプを押した時の喜びはきっとプライスレスです。また、ひとつひとつスタンプについての背景知識もお父さんから教えてもらったりすれば、よい教育の機会になるでしょう。

執筆者

  • 弘田 陽介
  • 福山市立大学大学院・教育学研究科准教授
  • 大阪市出身。京都大学大学院教育学研究科博士後期課程修了(教育学博士)。
    現在、福山市立大学大学院・教育学研究科准教授。
    専門はドイツ教育思想(18世紀後半~、カント、啓蒙主義、神秘主義)、実践的身体教育論(整体、武術、プロレスなど)、子どもと保育のメディア論(アートや鉄道趣味など)。
    著書として、『近代の擬態/擬態の近代』、『子どもはなぜでんしゃが好きなのか』の他に、鈴木晶子編『これは教育学ではない』(冬弓舎、2006)、『教育文化論』(放送大学、2005)にも寄稿。雑誌『日経Kids+』やNHK「あさイチ」毎日放送「ちちんぷいぷい」、朝日放送「キャスト」などでは独自の鉄道文化論が紹介されている。
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