電車で子どもがぐずったら 専門家が教える親が取るべき行動(3) 周りにいる「子どもと関わりたい人」

弘田 陽介(福山市立大学大学院・教育学研究科准教授)

更新:2016-10-25

4~6歳くらいでは、幼稚園や保育所での集団生活もほとんどの子どもたちが経験しています。ですので、ある程度、理性的に社会的なルールを根気よく伝えていく必要があるでしょうね。「ここは電車のなかだから……」という形で、車内が公の場であることはきちんと教えなければなりません。大人でも車内での化粧や携帯通話がマナーに反するのは、公共の場で私的な営みに没頭することを咎めているからにほかなりません。

 例えば、この時期の子どもが大きな声で喋っているようでしたら、「声が大きいとほかの人がうるさく思うよ」「電車のなかはお家のなかとは違うのよ」ときちんとお話してください。ある程度理由もわかる年頃ですから、頭ごなしに注意するのではなく、よい教育機会だと思って、丁寧に伝えるとよいと思います。

 また車中の時間を利用して、子どもといろいろな話をしましょう。子どもも車内広告の写真や周囲の大人に興味をもっています。また、周囲の大人にも味方になってくれる方もおられます。特に年配の方々は、「子どもたちと関わりたい感」を前面に出している方がおられます。

 こういう機会を利用して、子どもに知らない大人との話し方を教えればよいのではないでしょうか。例えば、知らないおばあちゃんに「おいくつ?」と聞かれて、子どもが「4」と答えたとしましょう。この後、親が「4歳です」と丁寧語や最後まできちんと話す仕方を、子どもの言葉の後に親がリフレーズすることで、きちんとした教育をしていると思われ、周りの大人への印象もずいぶん変わります。

 いずれにしても、車内での経験はとても大切な社会経験です。小さいときから、公の場である電車での移動を経験させることは、子どもにも大人にも少し試練になるかもしれません。ですが、常に家庭の延長であるワンボックスカーで移動していると、年長さんの年齢になってから必要とされる社会性を身につけるきっかけとなる経験ができないことになります。

執筆者

  • 弘田 陽介
  • 福山市立大学大学院・教育学研究科准教授
  • 大阪市出身。京都大学大学院教育学研究科博士後期課程修了(教育学博士)。
    現在、福山市立大学大学院・教育学研究科准教授。
    専門はドイツ教育思想(18世紀後半~、カント、啓蒙主義、神秘主義)、実践的身体教育論(整体、武術、プロレスなど)、子どもと保育のメディア論(アートや鉄道趣味など)。
    著書として、『近代の擬態/擬態の近代』、『子どもはなぜでんしゃが好きなのか』の他に、鈴木晶子編『これは教育学ではない』(冬弓舎、2006)、『教育文化論』(放送大学、2005)にも寄稿。雑誌『日経Kids+』やNHK「あさイチ」毎日放送「ちちんぷいぷい」、朝日放送「キャスト」などでは独自の鉄道文化論が紹介されている。
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