家事・育児への協力~パパの禁句~

小崎 恭弘(大阪教育大学教育学部 准教授)

更新:2016-07-15

 最近のイクメンブームですが、少しかげりが見え始めてきました。といってもイクメンが減ってきたということではなく、反対に多くのイクメンか増えてきたということです。つまり「子育てをする男性」が少数派ではなく多数派になってきたということです。ある調査によると20代の30%は「かなり積極的に参加」になっています。「人並みに参加」という人も含めれば、3人に2人は子育てを当たり前のように感じているようなのです。

 しかしそんな子育てを頑張っている父親たちにも、落とし穴はあります。それが子育て中の母親に対する禁句です。「ついうっかり」ならまだいいのですが、問題の禁句は、父親は全く気がつかず母親に対して言っているのです。その場合はかなり問題です。

 例えばこれはNPOのメンバーの間では、絶対に口にしてはいけないとなっているのが「手伝おうか―」です。父親たちは何気なく使っていることが多いと思います。これは子育ての主体はあなたで、僕は時々手伝うよー!という、ご気楽なイメージを与えてしまうようです。ママたちの意見は「手伝う?はぁー?」「することが当たり前でしょー!」というもののようです。この流れで言うと「父親の子育て参加」なども、やはり母親たちにはしっくりとこないようです。「参加」という、何かそこには選択の自由や拒否の可能性も含まれているニアンスですね。しかし母親たちにはそんな選択権もなければ、極端な話、休憩もない場合もあります。絶対参加の母親に対して父親のみが「参加・不参加」を、結婚式の出欠はがきのように、勝手に決めるのもおかしい感じがします。

 その他には、母親の子どもに関する相談や子どもの困りごとに対して「お前に任せた!」と、なぜだか潔く(いさぎよく)言ってしまうことです。この潔さは決して男らしいことではなく、単に責任の回避というか、極端に言ってしまえば責任の放棄です。なぜこんな言い方になるのか?一つには子どものことがよくわからずに、適切な答えが用意できないということがあると思います。また「子育て=母親の仕事」というように思っていて、そこは僕の入るところではないという認識なのかもしれません。もしそうであれば、父親はとっても残念です。せっかく家族を作れるチャンスを自ら放棄しているようなものですから。

 これらの言葉には父親が「子育ての主体」ではなく、お手伝い役という意識が見え隠れします。そうではなく楽しみもそして苦労も、父親と母親が共に引き受け、感じて、二人が子育ての主人公になってほしいと思います。子育ては二人ですれば、楽しさ倍増、しんどさ半減ですよ!
 

執筆者

  • 小崎 恭弘
  • 大阪教育大学教育学部 准教授
  • 1968年生まれ、兵庫県出身。
    専門分野:児童福祉、子育て支援、保育学 研究テーマ「男性の育児支援のプログラムとシステム」 主な著書「我が家の子育てパパしだい」(旬報社)「パパルール」(合同出版)「ワークライフバランス入門」(ミネルヴァ書房)「男の子の本当に響く叱り方・ほめ方」(すばる舎)
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