子育てはいつまで続くものでしょうか?

小崎 恭弘(大阪教育大学教育学部 准教授)

更新:2016-06-03

 子どもをお持ち、あるいはこれからこどもがほしいと思っている方に質問です。

そのこどもの子育ていつまで続ける予定ですか?

 今子育ての大変さが社会の様々なところから聞かれます。

 「子育てがしんどい」「子育てが大変」などという声や意見は、子育て中の親ならだれしもが、一度は思うことなのではないでしょうか?色々と要因は考えられますが、その一つの要因が「子育ての終わりの見えにくさ」にあるといえます。子どもが生まれればほぼ自動的に、あるいは強制的に「子育てスタート」です。3時間おきの授乳に丁寧な沐浴、安全の確保におしめ替え、おさゆの準備に離乳食の用意…息つく暇もなく、次から次にこどものお世話が待っています。これが嫌とか、だめとか言っているのではなく、赤ちゃんの世話がなんだか永遠に続く気がします。「私は一生この子のオシメを替え続けるのでしょうか?」とちょっと疲れた顔で、ママに訴えられた事があります。
 
 現代の子育てのしんどさの一つは先行きの見えにくさです。つまりゴールがよくわからないこと。昔は「中学に入れば子育ては一区切り」「大学卒業までは面倒を見てあげる」「社会人になってやっと子育て終了」など、若干遅い気はしますが、それでもある程度の区切りは見られていました。しかし最近その区切りが、どんどんゆっくりと遅くなってきている気がします。大学の入学式、卒業式も保護者の方が多く来られます。会社の入社式にも保護者が来るようです。仕事を休む連絡を親御さんがしてくるなども、もう珍しい事ではなくなっているでしょう。
 
 つまり子育ての期間が長くなってきています。この現象の理由は大きく二つあります。一つは社会全体が複雑化、高度化し仕事や生活に必要な知識や技術を学ぶのに、時間がかかりその期間が伸びたということです。そしてもう一つは社会全体が幼稚化し、成長や成熟に必要となる体験や経験が圧倒的に不足し、こども達が大人になるプロセスがわかりにくくなったということです。この事が子育てのゴールをさらに見えにくくしています。
 
 しかし子育ての本質は「親離れ」です。親の庇護のもと成長を行い、その親の殻を破り捨てていくことが、こどもに課せられた唯一の役割です。親にとってはある意味悲しく、そしてつらい事ではあるかもしれません。「子離れ」を意識するということですから。しかしその時期を幼いころから意識をして、子育てをしましょう。永遠に続くという幻想は捨てて「いつかこの手を離れる者」としての子育てです。だからゴールを見据えて、この子どもが自分ひとりで生きていくことができる、人間にしてあげましょう。
 立派に自分で生きていける人間を育てる営みって、とっても素敵でしょ!

 子育ての一つのだいご味です!
 

執筆者

  • 小崎 恭弘
  • 大阪教育大学教育学部 准教授
  • 1968年生まれ、兵庫県出身。
    専門分野:児童福祉、子育て支援、保育学 研究テーマ「男性の育児支援のプログラムとシステム」 主な著書「我が家の子育てパパしだい」(旬報社)「パパルール」(合同出版)「ワークライフバランス入門」(ミネルヴァ書房)「男の子の本当に響く叱り方・ほめ方」(すばる舎)
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